神経認知機能障害について
中核症状・周辺症状(行動症状・心理症状)があります。
中核症状はみんなにでますが、
行動・心理症状は出かたに大きな差があります。
中核症状は脳の認識機能が低下した人であれば誰にでも起こる症状です。
一方周辺症状は必ずしも認知症の人全員に起こる症状ではありません。これは多くの要素(中核症状の状態、本人の性格、生活環境、身体状況、介護者との人間関係)に左右されます。
- 中核症状
- 記憶障害、失見当、判断力障害、性格変化、実行機能障害、失認・失行・失語
- 行動症状(周辺症状)
- 徘徊、失禁・不潔行動、介護抵抗、暴力、食行動異常、睡眠障害、無為・無反応
- 心理症状(周辺症状)
- 妄想、不安・焦燥、幻覚、抑うつ
中核症状
- ■ 中核症状
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- 出来事を忘れる :何を食べたか思い出せないのは老化ですが、認知症では食べたこと自体を忘れている。
- 少し前のことを忘れる:特に最近の記憶が保てず、新しいことを覚えられなかったり、何度も同じことを言ったりする。
- 体験や経験をわすれる:進行すると場所や人がわからなくなる。
- ■ 失見当
- 見当識障害ともいう。今がいつで、ここどこかを把握する力を失われるため、よく迷子になる。判断力障害考えがまとまらず、とっさのことに対応できない。
- ■ 実行機能障害
- 物事の手順がわからなくなり、計画が立てられなくなる。
- ■ 失認
- 使い慣れた道具が意味不明のものになる。(使いたかがわからない)
- ■ 失行
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着衣失行 :服を着ることができない。
観念運動失行:指示された動作ができない。 - ■ 失語
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- 非流暢性失語:言葉が出てこなくなる。
- 語義失語 :読み取りや聞き取りによる言語理解ができない。
行動症状
- ■ 徘徊
- 一見目的もなく出ていき、あちこち歩き回るうちに帰れなくなってしまう現象。
- ■ 失禁・不潔行動
- トイレの場所がわからない、尿意や便意を伝えられない、尿意や便意を自覚できないなどの理由で失禁が増えます。また、汚れた下着をしまい込んだり、便をところかまわずぬりつける弄便を行う。
- ■ 介護抵抗
- 着替え、入浴、整容、リハビリなどを拒否することがある。
- ■ 暴力・暴言
- 介護者に対して暴力を振るったり暴言を吐く。
- ■ 食行動異常
- 食べ物でないものを食べたり(異食)、過食や拒食がみられる。
- ■ 睡眠障害
- 昼夜の区別がおかしくなる。
- ■ 無為・無反応
- 自分から積極的に何かをすることもなく、かつ好きだったことにも関心がなくなる。
心理症状
- ■ 妄想
- 現実にはないことを実際にあったと思い込む。
- ■ 不安・焦燥
- 自分がおかしくなったことをどこかで漠然と感じているため、常に漠然とした不安や焦燥感にかられている。
- ■ 幻覚
- そこにはいない人の声が聞こえたり、ないものが見えたりする。
- ■ 抑うつ
- 気持ちがふさぎ込んで、うつ病に似た症状を呈する。
認知症用語の統一についての解説
認知症は英語でdementiaと書かれます。これは精神疾患用語の統一記載のためのDSM-Ⅳ(精神障害の診断と統計の手引き 2000年)に記載されている言葉です。
DSM-IVが発表された時の日本語訳は痴呆という言葉が使われていました。
引用 DSM4wikipedia
ここに出てくるdementiaの日本語が2005年に認知症に変わりました。
変わった理由としては、言葉の示す意味が一般の用語として侮蔑的な意味が無い事を重視し、他の用語訳と重ならない事が主要な点でした。
詳しくは厚生省のホームページ似詳しく書かれてあります。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1224-17.html
このときのアンケート結果では、
・認知障害 | 1,118人 (22.6%) |
・認知症 | 913人 (18.4%) |
・記憶障害 | 674人 (13.6%) |
・アルツハイマー(症) | 567人 (11.4%) |
・もの忘れ症 | 562人 (11.3%) |
・記憶症 | 370人 (7.5%) |
で、実は認知障害が一番多かったのですが、Other Cognitive Disordersの訳とかぶるので認知症となった経緯があります。
しかし今度は英語が変わったのです。しかもこの改訂は用語としてでなく、解明しつつある疾患にふさわしく改訂されました。
参考になる文章として「認知症のすべて」というサイトから引用させていただきます。
http://neuro-cognitive.com
2015年に完成が予定されるICD-11(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)において、この認知症という語句も神経認知障害(Neurocognitive disorder)へと改変され、統一される。ちょうどそれは日本で2005年に、古代中国から引用された「痴呆」(痴=痴人、愚か:呆=惚け、阿呆)が印象が悪いために「認知症」へと改められたことに対応する。
しかし私は、Neurocognitive disorderと改訂された事の本質は、
症から障害というとらえ方の変化だと考える事が本当の意味で正しいのだと考えています。せっかく神経の認知機能に対する障害として薬物やリハビリなど多くの回復療法が確立しつつある中で、日本語の症としての用語の使い方としてとどめておくより、直接の訳語である神経認知機能障害という用語を使用した方がよいのではと考え統一しました。もちろん病名については、例えばアルツハイマー型認知症であればそのままで使用したいと考えています。