Modulation of Neuron Network 神経ネットワークの調整


においと脳


においのメカニズム


長い間、においと脳の関係はわかりませんでした。しかし最近ようやくにおいを感じる脳のメカニズムが解明されてきました。人の鼻の奥に並んでいる嗅細胞には、におい分子受容体が備わっており、外界から嗅ぎこまれたにおい分子がにおい分子受容体と結合した時に、電気信号が脳にある嗅球へと伝わります。

人のにおい分子の数は390種類あるといわれています。1つのにおいには数種類のにおい分子があり、それがそれぞれどのにおい分子受容体と結合したかの組み合わせの電気信号で、においの識別ができるということがわかってきました。

次に信号を受け取った脳はどのように反応するのでしょうか。脳の働きを調べるには、かつては電極をつなげ電位の変化を測定するしかできなかったようです。脳波を測定するには頭皮上に電極をおいて行う頭皮上脳波と、頭蓋骨を切開して行う頭蓋内脳波の2種類があり、前者ではにおいを嗅いだ時の脳の反応はわずかなので正確に読み取れないことが多く、また、後者では、麻酔をすると脳の機能が低下し、正確に信号を測定することが困難であったとの報告がありました。

そこで動物専用のfMRI装置を用いて、ラットの脳内がどう変化するのかという実験を行った事例がありました。fMRIは脳や脊髄の神経細胞の活動に伴った血流動態反応を視覚化できます。

神経細胞は活動する時、酸素を消費します。酸素を運ぶのは血液中にあるヘモグロビンですから、神経細胞が活性化すると酸素消費が増加して脳血流が増えます。その時の組織内の酸化されたヘモグロビンと非酸化ヘモグロビンの比率を計算し、その変化量をfMRIによって画像化すれば、どの部分の神経細胞が活動しているか、つまりどの部分が活性化しているかがわかるというのです。

そこで真正ラベンダーの精油の香りを嗅いだ時、ラットの嗅球の血流がどのように変化したかを調べると、1分後には外側の血流が減少し、腹側が増加しました。どのマウスでも同様の変化が見られるため、同じにおいを嗅いだ時、嗅球の同一部位が活性化あるいは抑制されることがわかりました。

また、レモンの精油の香りを嗅いだ時は、ラットの前脳の内側部と腹側部の血流が抑制されました。この部位は副交感神経を司っていますから、副交感神経が抑制されることで交感神経優位となり、体が活発な状態へとシフトしていると推測されます。

この実験では8種類の精油の香りと3種の基準臭のにおい刺激に対するラットの脳応答を観察しており、満腹中枢、摂食中枢への血流量も変化し、特にジンジャーやティートリーの精油は視床下部の外側野の脳血流量を顕著に増大させることが明らかになりました。

暑さで食欲が減退している時に、しょうがやスパイスの香りを嗅ぐと食欲がわいてくることを日常生活でなんとなく認識しています。これはにおいと食欲には密接な関係があることを示唆しています。
ラットの実験で明らかになったことは、人の脳内でも同様なことが起きている可能性を示唆するものとして、現在人を対象に研究が進められています。


引用
塩田清二著 「<香り>はなぜ脳に効くのか―アロマセラピーと先端医療」
NHK出版新書 p216、2012



神経認知機能障害の脳内画像


早期発見のための神経認知機能障害のMRI 海馬と側脳室下角の変化


早期発見早期治療の時代へ
一回だけのMRIでは、発見困難です。

神経認知機能障害の脳内画像


現在の神経認知機能障害の分類と 脳血流パターン


アルツハイマー、前頭側頭型認知症
レビー小体型認知症の
血流パターンの比較。

レビー小体型認知症の血流パターンの比較


現在の神経認知機能障害早期発見法 eZISの応用とPIB-PET画像(アミロイドPET)


レビー小体型認知症の血流パターンの比較



ニオイの経路は、2つのパターンあり


内側髄条系
従来経験的にアロマのニオイ効果により穏やかになったり、活性化したりする機序が、科学的に説明できるようになった事を学びます。
外側髄条系
ニオイが視床を経路せず、すばやく直接嗅内皮質という嗅覚の中枢に行くことと、それだけでなく海馬まで到達し記憶に情報を送る機能を学びます。


内側髄条経由の嗅覚路(大脳辺縁系)


内側髄条経由の嗅覚路(大脳辺縁系)


視床と視床下部


視床と視床下部


嗅球から手綱核への左右非対称な神経回路の発見(理化学研究所 2011年)


嗅球から手綱核への左右非対称な神経回路の発見


手綱核(外側亜核は学習記憶の定着、内側亜核は適切学習)


手綱核は、終脳の辺縁系と呼ばれる、情動制御に関わる領域と、脳幹部のドーパミンやセロトニン分泌神経細胞とをつなぐ中継核で、恐怖や動機に基づく行動の制御に関わる可能性が高い。

手綱核(外側亜核は学習記憶の定着、内側亜核は適切学習)


海馬との関係を立体的にとらえる


海馬との関係を立体的にとらえる


外側髄条系 嗅覚が海馬に確実につながった


外側髄条系 嗅覚が海馬に確実につながった



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